
久しぶりの座談会。
今回はそれぞれが設計している住宅の中で取り入れている空調のことについて、みんなで話をしました。
■高気密高断熱の家とOMソーラー、薪ストーブ
石原 : 最近建物の断熱や気密性能があがって、エアコン1台でも十分冬暖かくて夏涼しく暮らせるようになってきているので、OMソーラー※を入れない家も増えてきているみたい。
※注 : 太陽熱を屋根で集めて床下に送り、基礎で蓄熱し、それが放熱することで家全体を暖める方式のシステム。くわしくはこちら。
平間 : 費用がかかるし、メンテナンスも必要だし。屋根にガラスをのせて集熱しているから、住みはじめてから途中でやめることもむずかしいし。
橋垣 : 石原さんと平間さんは、設計する建物にOMソーラーを計画することが多いですか。
石 : できれば入れたいですね。
平 : 入れたことも多いけど、最近はほとんど入れる機会がなかった。
石 : 留守の間の換気機能が魅力的なんだよね。
平 : 子供がひとりで家に帰ってきた時でも、すでにある程度暖かいっていうのもいい。
石 : 別荘なんかでは絶対に入れておいた方がいい。
内 : 高気密の話とOMソーラーの換気の話ってどういう関係なの?
平 : 高気密にしたら変な感じになっちゃうよね。
石 : きちんとやっている人は、寒冷地などではちゃんと連動させて出口をつくっていますね。寒冷地だと深刻だけど、関東以西ではそんなに考えなくてもいいかな。
平 : 多少ルーズな方がうまくいくかも。。
橋 : 最近の家では断熱性能が高まって、窓の気密性能も高くなることが多いと思うけど、そういう家ではどうしているの?
石 : どこかをあけて排気がないと入ってこないよね。
廣谷 : 24時間換気の分だけでは足りないの?
石 : 足りないね。
廣 : 気密性を高めるっていう時には、壁の気密性の話しなのか、壁に(給気や換気の)穴をあけるあけない話なのかを整理して考えないとわからなくなっちゃうけど。
内 : 何が違うの?
廣 : 壁の気密をちゃんとするっていうのは、壁の中に熱や湿気が入り込まないように気密をちゃんとするということで、それはOMソーラーの家だってなんだって必要なことだよね。今話している気密というのは、家の中の空気をどうやって入れ替えるかという観点で考えた場合、壁や窓の性能が高くなって密閉性が高くなったときに、どうやって外と中をつなぐ穴をどうあけるのかということだよね。
石 : それを時間でコントロールしなくちゃいけない。OMソーラーをやっていない時には冷気が入ってきて寒いから閉じたい。OMソーラーをやっている時には穴があいてないと効かないという、そこが問題。
内 : 気密性を高めることと、第3種換気をどうするかという話につながりますね。
石 : そうですね。
内 : 進行中の家で、薪ストーブを入れる計画があって、壁や屋根に穴をあける必要があるので、その時に気密を高めることと薪ストーブを入れることがうらはらだなと思って。
廣 : 薪ストーブでFF式※はないの?
※注 : 燃焼用空気を室外から送風機の力で強制的に取り入れ、排気は給排気筒を通して室外に出す方式。
内 : 違うの。上昇気流によるドラフト効果で空気が動くから、給気口を設けて外気を取り入れる必要があるの。
廣 : そうなのか。
石 : 奥村さんは薪ストーブの下にパイプで外から給気をとっていて、そこは閉じてはいなかった。暖気がそこを通って出て行くというのは考えにくいし。普段薪ストーブを使ってない時は閉じておいてもいいかもしれないね。
そういうのもやったことがあるな、それは暖炉の中につけた。暖炉の中に直結させて、中にダンパーを設けて。
橋 : 薪ストーブをつけた時に、薪ストーブの近くに設けた給気口とは別の(24時間換気用の)給気口から空気が入ってきて寒くなってしまうことがありますよね。
石 : そうそう、そこで換気扇をまわしたら煙が逆流してきたりとか。
内 : 給気口の大きさによるんじゃないかな。
平 : 薪ストーブの近くの給気口から入ってくる空気の量が十分であれば、他のところからひっぱらないとか。
内 : 気密を高めすぎると他の問題が出てきますね。
廣 : そのあたりを間取りで解決していく提案はないのかな?例えば薪ストーブ室をつくるとか。
皆 : そうもいかないでしょう(笑)
廣 : 高気密高断熱にして、暖炉入れてでも穴をあけてと矛盾だらけの部屋ではなくて、少し気密性の低いルーズな部屋を作っておいて、暖炉の熱だけ利用するとか・・・。
橋 : でも部屋で区切るんじゃなくて、薪ストーブで家全体を暖めたいことが多いかな。
内 : 30、40坪くらいの家なら薪ストーブ1台で家中暖まるし。
石 : でもよく燃える暖炉は寒いよ。火が見たいけど、必要以上に燃えちゃうと寒いので、うまい具合に燃やすことに奥村さんは腐心してた。

リビングに薪ストーブを設置した家。
吹き抜けを通して2階にも暖かい空気が伝わり家全体をあたためる。ストーブの近くに空気の取り入れ口をつけました。
■床下エアコン
内 : OMソーラーと床下エアコンの組み合わせってどうですか。床下を利用するという仕組みは同じだから、太陽が出ていない時は、床下エアコンで暖房するっていうのはどうだろう。
石 : 能力的にエアコンって空気を暖めるためにできているから、床下のコンクリートを暖めようと思うと、よっぽどベースができてない限りむずかしいのが実際。だから蓄熱しないということならあるかもしれないね。
平 : 床下エアコンをやるなら、床下全部に断熱を敷く必要があるけど、OMソーラーのためにはやらないから、どんどんコンクリートにエアコンの熱をもっていかれてしまい、効率が悪くなってしまうんだよね。
石 : OMでパッシブエアコンっていうのをやっていて、私はそれをOMソーラーと組み合わせられたらすごくいいと思っていて。エアコンを天井裏に置いて、暖房は床から、冷房は天井から吹き出すんだよね。
橋 : 内さんがこの間設計した家では床下エアコンを入れたんですよね。冷房はどうしたんですか。
内 : 床下エアコンで冷房もできるシステムで、補助として吹き抜けのいちばん高いところにエアコンを1台入れました。第一種換気と一緒に考えているから、空気が全体的にまわるように計画しています。冷気が床下を通って各部屋の床にあるスリットから出るようになっています。
廣 : ひと冬越えてどうでしたか。
内 : 暖かかったですよ。床下エアコン、うまくいっていますね。あとはこれから夏がどうなるかですね。冷房が心配だったので、夏にすでに同じシステムを入れた家を見学に行ったんだけど、すごく涼しかったし結露もしていなかった。
廣 : エアコンは24時間ずっと動かしているの?
内 : はい、エアコンはずっとつけっぱなしです。
廣 : エアコンはどのくらいの設定温度なの?
内 : 暖房は23度くらいだと思います。
石 : ランニングコストはどうですか?
内 : 細かくは聞いてないけど、5キロの太陽光パネルを屋根にのせていて、売電と買電金額が同じくらいだそうです。
皆 : すごいねー。
内 : そのかわりC値は0.5だし、Q値も低いので、そこに費用がかかっています。30坪の平屋で、基本的にはエアコン1台でいけています。今回の床下エアコンのシステムは、それぞれのゾーンにダクトでもっていくようにしているからですね。
橋 : システムを入れるのに費用がかかったとしても、各部屋にエアコンをつけるよりは安くなるのかな。
内 : そうですね。だんだん床下エアコンが主流になっていくんですかね。
石 : 床下にはならないかもしれないけど、エアコン1台で足りるようになってくるよね。
廣 : 一方で、建物の性能がすごく上がってきたからこそ、エアコン1台でできることも大事だけど、窓をあけるとか、日射の取得とかそういうプリミティブなことでも十分効果があるはずだよね・・・。
石 : OMソーラーでは、工事やメンテナンスが大変なのでお湯とりをやる家が少なくなっているんだけど、太陽熱でお湯をつくるっていうことができるんだから、なんとかやっていきたいよね。もっと単純な(朝日ソーラーやノーリツにあるような)太陽熱温水器でもいいんだから。
■床暖房、床下エアコン
橋 : 私は床暖房を入れて、それでも暖かさが足りない場合や冷房時にはエアコンを使うようにする場合が多いのだけど、床暖房はどうですか?
石 : 放射暖房のありがたさもあるんだけど、足がさわっているところが暖かいということの効果がすごくて。
家の中って空気の対流があるから、何もしていないと足元ってやっぱり寒いけど、ちょっとでも温度があがっているとその対流が抑えられるところがあるよね。
廣 : 究極まで断熱性能が上がったら、床暖房はいらなくなるよね。壁がよくても窓やどこかの隙間からの冷気が床をはっているから、それをとめるために床暖房を入れているわけだし。
橋 : その冷気がとまれば、床暖房だけでもすぐに十分あたたかくなるよね。
廣 : でもそのちょっとの冷気を止めるのはハードルが高いと思ってる。例えば窓はトリプルガラスのガス入りにしたりとか、そのあたりまでいかないと難しいかも・・・。
内 : だんだんトリプルガラスが標準になってくるという話しもありますよね。
廣 : あとは窓1枚だけで解決するのではなく、断熱戸をつけたり窓下ヒーターをつけたりとか。
内 : 窓からの冷気に対しては、床下エアコンやOMソーラーの場合、窓の前に暖気の吹き出し口をつけるから効いているんですよね。
橋 : そう考えると床下エアコンって、床暖房よりは弱いけど足元からの暖かさがあって、窓の前に暖気が吹き出すからガラス面からくる寒さ対策にもなるし、エアコンなのに普通に使用している時に感じる風が吹き付ける不快感がないし、ヒートポンプだからある程度コストも抑えられるし。すごくいいですよね。
内 : 床下エアコンは対流式だけど、家全体が安定して暖まっているから、空気だけじゃなく、物も暖まっているということを実感しました。
廣 : あとは、私は24時間エアコンを動かしていることへの抵抗感だけかな。
橋 : でも途中でスイッチを入り切りするより付けっぱなしの方が、電気代が安いって話もあるよね。
廣 : それは何と比べるかって話かなと思ってる。ほとんど家に人がいて、家にいるときは毎日エアコンをつけているという人は、24時間つけっぱなしでも電気代はかわらないかもしれないけど、あまり家にいなくて本当に暑い時だけしかエアコンを使ってない人は、やっぱりかわると思う。その人も24時間エアコンをつけっぱなしにしないと快適にならない家なのだとしたら問題あるような・・・。
橋 : あと床下エアコンの場合、部屋だけじゃなくてトイレとか洗面所とか廊下とかも全部、家全体が暖かくなるのもいいよね。
廣 : そうだね、だから何と比較するかだね。高齢者や赤ちゃんのいる家など、家の暑さ寒さに日常的に困っている人にはいいかもしれないね。
平 : 生活スタイルによるよね。
石 : 快適な環境で暮らしたいっていうのはそんなにみんなかわらなくて、それをどうやって実現するかという方法の問題で。ところが実はどういう環境がいいかっていうのは人によって違っているから、こんなはずじゃなかったとか・・・。暖かいとか寒いとかは説明ができないのがむずかしいね。
廣 : でもそこに付き合っていくのも大事だし、面白いことかもしれないですね。
皆 : そうだね!
2017年6月 @いろは設計室