
少し前になってしまいますが、緑と陽の光がまぶしい5月某日、さくら組のメンバーが集まり、「暮らしと家のかたち」について話してみました。
キッカケは私(平間)が以前見たテレビ番組の中のあるお宅のお話。。。
暮らし方をかたちにしていくプロセス
平: 以前にTVで、東北で被災された方の家(番組スタッフの方のご実家)を建て直す過程を
追っていく番組を見たんです。もともと建っていた家が、コーナーに大きな窓が入ってい
て敷地に入ってきた人を受け入れるような造りで、人が集まりやすそうなとても素敵な家
だったんだけど、建て替えたら閉鎖的で玄関ドア横のインターホンを押さないと家の人と
顔が合わせられないような家になってしまって。。番組では建替えられてよかった、とい
う話にしかなっていなかったけど、私はとても引っかかってしまって。
廣:もともと住んでいた土地への建て替えのケースで?
平:そう、前の家を壊して同じ場所なんだよね。
内:周りのご近所付き合いは変わらないのにその家の造りだけが変わってしまったのかな。
廣:違う場所に移ったのなら仕方ない部分もあるかもしれないけど、同じ場所に建てなおしたとすると、しばらく住むと違いが明らかになって、住んでいる人はさびしくないかな・・・。
石:被災して建替えるということになると時間もなかなかとれない、設計という意味ではあまり深く考えることができなかったんだろうね。
平:一般的な間取りを当てはめて・・・という形になってしまったのかも。。間取りって広さや使い勝手だけじゃなくて、暮らし方のスタイルも変えてしまうよね。
廣:私たちはこういう仕事をしているから、間取りを見るとここではこんな動線になって、こんな風に暮らすことになるだろうな…ということが分かるけれども、住まい手の方はなかなかそういうことまで想像することは難しいのでしょうね。
内:部屋がいくつあるかとか広さ的なことはわかるかもしれないけど。
石:この前設計のことでお話した方に、(形じゃなくて)どういう風に暮らしたいか、抽象的でもよいので考えてみてください、と言ってみたら「なんか楽しくなってきた。他のところでは部屋はいくつ必要か、というような話ばかりで窮屈だった」という答えが返ってきたの。本当はみんな掘り出せば希望は出てくると思うんだけど、掘り出して形にしていくプロセスというのができていないことが多いんじゃないかな。
内:効率をあげて早く進めないといけないという立場の業者さんもいるから。
平:そういう時に「みなさんこうされていますよ。」というような言葉で誘導してパターンにはめていってしまうことも多いのかもしれないね。
廣:今回のケースはとにかく早く!!ということだったり、前の家で震災にあっているので、あまり思い出したくないという心理もあったのかもしれませんが、前の家のよかったところや、楽しかったことなどを残しながら建て替えられたらいいのに、、と思ってしまいます。一方で、どうしても不便で古い家に住んでいると「新しい」家への願望というのが強くあって、便利な設備機器や洋風のことなどに気が行くのも分かります。私自身も、今は古い団地のスチールサッシをかっこいいと思いますが、自分の幼少期にスチールサッシの古い社宅からアルミサッシのマンションに引っ越した時に、窓の開け閉めの楽さに感動して、新しいっていいなぁと思いましたよ(笑)
新しいものと古いもの・開くことと閉じること
橋:地方に行けばいくほど、ハウスメーカーの家って多いですよね。ずっとそこに住んでいる方たちにとっては古いものではなくて新しくてきれいなものがいいという価値観もありますよね。
内:新しいものと古いもの、うまく合わせられるといいいですよね。
廣:そうそう。古いものがダメ、新しいものがいい、とかではなくてね。
石:あとは・・ライフスタイルが変わってきているということがあって、うちは音楽を聴くことが多いんだけど、そのうちに家族それぞれが違う音楽を聴いたり弾いたり、家の中での個人の行為が増えてくる。。そうすると、あんまりオープンだと困るという感じもあるんだよね。昔は大きなオープンな造りの家が多かったけど。
内:話は元に戻りますが、最初にでていたインターホンを押さないと中に入れない家なのか、内と外がなんとなくつながっているような場があるような家なのかで、暮らし方って変わると思うんです。
そういうことが、多分あまり認識されていないんだと思うんですよ。
平:広さや便利さのことだけで、間取りによって生活のスタイルが変わってしまうっていうことはあまり考えられていないですよね。
内:地域の特性というものがあって、都市部に建てるのとゆったりした敷地に建てるのとでは違うはずなのに、都市部と同じものを地方にも持ち込むというのがおかしい。
橋: 必ずしも地元というわけではなくて土地を購入して新築する場合もあって、防犯もことも
考えたり、なかなかオープンな家、というのも難しいかもしれないですね。
時代で変わってきたお付き合い
内:子供の頃住んでいた家は縁側があって、私はいつも玄関ではなくて縁側から出入りしてい
ました。
平:私の家も子供の頃、道路側に玄関があるんだけど近所の人は家の横を通って庭に回って縁
側から来ていました。急に「いる~?」って声が聞こえて。(笑)
石:ロケーションの問題で、近所付き合いなんかの影響もありますよね。そういう時代という
のもあるし。
平:建替えて、回り込む空地がなくなったので今は玄関からインターホンでという生活に変わ
りました。
廣:来るお客さんが変わった?
平:やはり減ったかな。。。私たち子供も大きくなったり母も仕事に出たりで暮らし方が変わってきたこともありますが。 そういえば、昭和って、いきなり人が訪ねてきますよね。 小説なんかを読んでいても、知人、友人が突然訪ねてくるよね(笑)
石:電話もなかったしね。
内:今は子供が遊びに行く場合でも、事前に確認してから家に行くけど、私が子供の時はいきなり家の前まで押しかけて「○○ちゃんあそぼ!」でしたよね。
全:そうそう!!
内:昭和ってそういう時代だったから。時代が流れて、間取りも変化していくものだけど、閉鎖的になりすぎて周りとなんの関わりもない家というのもどうかなとは思います。
平:時代によって、地域によって、ご近所付き合いによってスタイルはいろいろなので、一概にオープンな家がいいということではないけど、どんな地域に行っても同じような外観で同じようなプランで効率的に家をつくってしまうというのが悲しいかな。。
使い勝手や部屋数という話だけでなく、地域とどのように関わっていくのかとかどういう暮らしをしていくのか、家のプランニングによってかたちにできるということがあるのではないでしょうか。。
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