住宅・建築関係のエネルギーコンサルタント その1

今回は、住宅や建築関係のエネルギーコンサルティング会社に勤務している小田桐直子さん(佐藤エネルギーリサーチ株式会社)にお話を伺いました。

 

設計を業務としてる我々にとって、「エネルギー」というキーワードは大事だけれども今一つ実感や実態に触れにくいテーマでもあります。

そんなエネルギーに関するコンサルタント会社で働く小田桐さんに、仕事の内容をお伺いしつつ、誰もが実感できるような暮らしとエネルギーの関係についてもお聞きしました。

見慣れないエネルギーの数字も、暮らしと繋がると、とても面白いデータに見えてくるから不思議です。

 

今回のインタビューは、盛りだくさんの内容なので2回に分けてUPします。

まずは小田桐さんの仕事についてです。

その1「建物だけでなく、暮らしにまで踏み込むコンサルティングをするように・・。」

まずは現職につかれた経緯や仕事の内容など

 さくら組、以下さ):現在お勤めの「佐藤エネルギーリサーチ」という会社はどういう会社ですか?

(小田桐さん、以下小):佐藤エネルギーリサーチ株式会社は、工学博士である佐藤誠さんが始めた住宅や建物のエネルギーに関する調査やシミュレーションプログラムを作ったりするのが得意な会社です。2008年に設立・創業しています。私は3年位前に佐藤さんに誘われて加わりました。


さ):そもそもどういった人がエネルギーコンサル会社に就職するのでしょうか?

小):建築学科出身の人が多いですが、コンサル系の会社となると環境工学系の研究室に大学院まで行って本格的な研究をしてきた人がほとんどです。


さ):小田桐さんはどういう経緯で今の職につかれたのですか?

小):私はいわゆる本格的な研究をしてきた訳ではありません。

大学では建築環境工学の研究室に在籍していました。でも、もともとは設計がやりたかったのでその方面にアプローチしていましたが、色々と進路に迷いが生じ、結局、設計関係への就職はやめました。その際、縁があって現職と同様に環境やエネルギー関係の調査をしている会社を紹介され、補助スタッフのような形で入社しました。

 

その会社の意向としても、自分の意思としても2、3年で辞めるつもりだったのですが、なかなか機会がなく、、、、。そうこうする間に、工務店のコンサルを担当することになり、家1棟全体の熱環境やエネルギー使用量の調査を一人で担当することになりました。温度を測るためのセンサーを壁や屋根、床などにとにかくたくさん埋める作業を一人でしたり、給湯量を測るための計測システムを作ったり、、と本当に大変な仕事で、それが終わったときに、限界を感じてその会社を辞めました。結局そこに6年くらい在籍しました。色々と実践で鍛えていただき、とても感謝しています。

 

1度リセットして新しい環境に身を置きたいと考えて、地方の工務店で設計兼現場監督として1年ほど働きました。木造住宅の設計、現場監督と合わせて、前職からの技術を活かしてその会社の環境コンサル的な役割もしていました。在籍したのは1年間だけだったのですが、教えてもらいながらではありますが、設計から職人さんの手配、材の発注までを担当した1棟を完成させて、関東に戻ってきました。短い期間ではありましたが、そこで家づくりのひと通りを経験することができました。


さ):その後は?

小):関東に戻ってきてからも木を使った家づくりに関わりたかったので、工務店などへアプローチしてみましたが残念ながら就職はできませんでした。

 

そんな状況のときに、ちょうど研究室の恩師である宿谷昌則先生(東京都市大学)の講演会に参加した際に紹介されたのが、オーガニックテーブル株式会社というところでした。

そこでは、「学校エコ改修と環境教育事業」※という環境省の事業の事務局を担当していました。学校のエコ改修内容や校舎を使った環境教育のやり方などについて、教育委員会や設計者、学校の先生といっしょに考えたり、アドバイスをしてきました。結局そこにも7年位いましたが、会社の体制が変わって業務の方向性が少し変わってきたのを機に退社し、今の佐藤エネルギーリサーチに至ったということです。

 

今の会社でも、私が担当している仕事のメインは、学校のエコ化、エコスクールに関する調査やコンサルティングとなっています。加えて廣谷さん(さくら組メンバーの一人)と一緒に、使い手側へのコンサルティングというのもやっています。学校の先生に「あなたの学校のエネルギー使用量は○○ですが、もう少し○○といった工夫をすれば省エネできますよ」という情報を、口頭での説明や紙の資料で伝えるだけでなく、環境教育と絡めて伝えていくようなこともしています。


さ):一般的に言うと、エネルギーコンサル会社はどんなことを調査しているのですか?

また発注者はどんな人ですか?

小):仕事の発注者としては、国、地方自治体、外郭団体が多いです。

仕事の内容としては、アンケート調査の分析などもやります。たとえば各家庭の光熱費のデータを何千、何万と集めて分析して、こういう地域は暖房が多いとか、平均値はこの辺りです、、というような傾向を明らかにしていく仕事もしています。


さ):マクロで捉えるということは、そういう仕事をしている会社でないとできないでしょうし、面白そうですね。

小):他には例えば、断熱性能の違いによる室温の違いを調査したりもします。そうすると、断熱のいい家はトイレの室温が高いということが明らかになったり、、などそんなことも調べています。

 

私はエンドユーザーに関わるところに魅力を感じます。

さ):調査したデータの使い道は?

小):国や自治体で新しく指針を作ったり、目標値を設定したりする場合には必ず根拠が必要です。その根拠データとして使われたりします。


一方、行政だけでなく工務店など建築関係の会社からの発注もあります。例えば「こんないい家を開発したので、それを売り込むための根拠となる数値データが欲しい」などという場合は、シミュレーションをして年間の暖房エネルギーはこの位、冷房エネルギーはこのくらい、光熱費はこの位になります、、、といったような数字を出すというような仕事をします。


でも私個人としては、実はそこにあまり興味がないんですよね(笑)

年間の光熱費がいくら下がったと言う情報を聞いても、だから???という思いがあります。

 

さ):それはものづくり・現場に触れてきたという経験が影響していますか?

小):そうですね。詳細な計算をたくさんして、報告書としてまとめ上げることも大事だとは思いますが、報告書はあくまで報告書なので・・・。

難しい分析が苦手ということもあり、私個人としては、やはりエンドユーザーというか建物の作り手とか使い手に関わるところに魅力を感じます。


例えば、学校の省エネ技術の中でナイトパージ(夜間換気)というものがあります。夏の夜、教室の窓を開けて室内に夜の冷えた空気を取り込み、コンクリートに蓄冷させるという技術なのですが、技術自体は難しいことではなく、夜に窓を開けておけばいいというものです。しかし、いざその技術を採用しようと思った場合、防犯のことは?雨が降ってきたらどうすればいいの?実際にどのくらいの大きさの窓が何か所必要なの???効果的に換気できる窓の場所は???といった情報がないと設計はできないですよね。


さ):そうですよね。現場で困っている人は沢山います。

おおざっぱに全体を掴んで、その建物に合わせた具体的なアドバイスしてくれる人が求められていると思います。

小):たとえば先に話したようなナイトパージの課題を発注者に伝えたところ、「じゃあ具体的に設計の仕様書づくりまでやって・・・。」となったことがありました。

 

またエコスクールが実際にどう使われているのか後追い調査するという業務をしていたら、運用上の問題点というか改善点が見つかりました。そうするとそれをまた発注者に伝えたくなって、業務の仕様書には入っていないのですがサービスで資料をまとめてもっていくと「じゃあ先生方に対する改善指導までやって・・・。」とか、そんな仕事の広がり方をしています。

 

難しい分析が苦手ではありますが、一方で家が出来る経過や住まい手と直接やりとりしたことのある経験があるというのは、自分の強みでもあると思っています。

例えば、高断熱の家のエネルギー使用量調査結果を見ると、同じような仕様の高断熱の家であっても、家によって4倍近くエネルギー使用量に差があることがあります。なぜ同じ仕様なのに4倍も違うのか、4倍も多い家庭ではどんな生活をしているのかなど、細かいというか、生活の実態にまで踏み込んだところに興味関心が生まれてきてしまいます。

 

施設管理者といっしょに建物の使い方を考えることも仕事の一部です。

さ):生活実態という視点が加わると、調査と生活がつながってとても魅力的に感じます。

小):特に省エネ化、建物で使うエネルギー使用量を減らすというテーマに対しては、計算上の結果と実際には大きなかい離があるケースがあります。本当に省エネを実現させようと思っていたら、実際に建物が建った後に事後調査を行い、「想定に比べてなぜ増えたのか、どこか改善点はないのか」といったことを明らかにするために、生活実態にまで踏み込んで調査することが必要だと実感しています。

私も原発事故の前までは、断熱性をよくすれば快適になるのだから、エネルギーの使用量についてはあまりこだわらず、使い手が満足する環境が手に入ればいいかな、、、と思っていました。でもあの事故をみて、快適性の実現だけでなく、省エネの実現までを目的としないといけないと思うようになりました。そしてデータを色々と見ていたら、不要なものが動いてエネルギーを無駄にしていることや、設計者の想定とは異なる使い方をしている実態が見えてきました。

 

そのことに気づいて、伝えて、、ということをしてきたら、私の業務は会社の中では少し変わってきており、いわゆる調査というよりも省エネを実現するために設計者にアドバイスをしたり、施設管理者といっしょに使い方を考えたりというようなこともするようになりました。


さ):なるほど-。

小):小学校に関してはかなりデータが整理されてきて、やるべきことは見えてきましたし、学会やセミナー等でも明らかになってきたことの発信も始めています。

けれどもいざ発信してみると、伝え方の問題もあるかもしれませんが、そういった内容に興味を示してくれる人がまだ少ないなぁと感じています。分かったことを色々な人と議論やディスカッションをしてもっと深堀していきたいな・・と思っています。


さ):数字と実態をつなげないと面白がれないでしょうね。

小):同感です。ですから、私はひたすら現場で証拠を集めてきます(笑)

 

学校の昇降口が開けっぱなしで断熱効果が得られていないと思えば、登校時に学校に行って昇降口の前に立って「開けたら閉めましょう!」と児童や教職員に声を掛けます。

ライトシェルフがついていて、直射日光を遮り、十分な明るさを得られているのに窓側の電灯照明が消されていない実態が分かれば、全クラスの窓側の電灯照明のスイッチに傘マークのシールを貼って、雨の日だけ点灯することをことが分かるような工夫をしてきます。

 

そういう行動をした上で、改善前・改善後で電力量データを比較して「ほら原因はここでした!」といったような証拠集めをしています。


さ):すごーい。

小):仕事を通じて教育委員会さんと信頼関係が出来てきたことで、そういうことが出来るようになってきました。

そういったことが業務なの??と言われればそうですが、でもこんなことで年間100万円くらい光熱費が下がれば、それはそれで凄いことだし、教育委員会も先生方も喜んでくれます。


さ):それはすごいことだと思う。すごい実績ですね。

小):そうなんです。だからその半分の50万円を私に下さい!って言いたい(笑)


さ):やはり使い手の意識の問題というか、意識が変わらないといけないということですよね。

小):そうですね。そのためには、生活者や使い手が実感をもって理解できるような数字というかデータを提供するということが重要だと思っています。ちゃんと興味が持てるような資料を作れば、一般の人であってもちゃんと見てどう行動するか考えてくれます。


 

続きは、「その2 エネルギーから暮らしを見る」へ

※1 学校エコ改修と環境教育事業(通称 エコフロー事業)

環境省の補助事業の1つ。地球温暖化防止を目的として既存の学校校舎をエコ改修するにあたり、その改修の過程や改修された校舎を、児童のみならず、地域住人や地域の建築技術者など、社会人に対しての環境教育の教材としても活用していこうとするもの。全国で20校のモデル校がある。


詳しくはこちらへ →  エコフロー事業のホームページ (注)音が出ます。