だいぶ前のことになってしまいますが、6月のさくら組の集まりでは吉祥寺の石原朋子さんの事務所へ伺ってきました。

駅から近いのに静かで、そしてとても明るい部屋です。

 

びっくりしたのが壁一面に貼ってある地図!(上の写真の左上の壁に注目)

コピーした地図がかなりの広範囲まで張りあわせてあります。バイクに乗る石原さんはきっとこれを見て道を覚えてあちこちへ行っているのだと思うのですが、方向音痴の私はあの道を進むとあそこにつながるとか説明されても全くイメージができません・・・。本当にすごいです。

 

そんなお部屋拝見から始まって、その日は石原さんがみんなに温熱環境についての考え方や計算の仕方などをレクチャーしてくれました。

(くわしい内容はこちらをご覧ください。)

 

 

そしてその後は「色」をテーマにみんなで話をしました。

 

白ってどんな色

: 色を使うときに気をつけていることはある?

: たとえば白についてどう考えますか?白といっても本当の純白(無彩色の白)や、グレーや黄色が少し入った白もあるけど、、、。

: 昔はアイボリー(少し黄色が入った白)だったけど、だんだんグレーの入った白を使うようになってきた。

以前外国の方の家を設計した時に、日本には家電でも何でも黄色がかった白が多すぎるって言われたことがあった。黄色がかった白の家電などを白い壁の前に置いたら、黄ばんで汚れてしまったように見えるのに、何で日本はこうなのかと。

: 真っ白い浴槽を探そうと思ってもなかなかないよね。

: 真っ白じゃなくて少し色が入った中間的なものを選びがちだよね。

: 具体的には、たとえば白色を塗装する場合によく使っている白の色、例えば日塗工(塗装の色の基準になる色見本)の番号などはありますか。

: 私は塗装仕上げにすることはほとんどないからそれはなくて、たとえば漆喰の白とかになる。

: 前に勤めていた事務所では、真っ白を使うことはなく、少しグレーが入った白を使っていて、黄色や茶色が入った白を使うことはなかった。事務所の先輩になぜ?と聞いたら、ハロゲン電球や白熱灯などの照明をつけるとその黄色が壁の白に入るから、黄色が入った白を選ぶと、想像以上に色が付いて見えるから色の入った白じゃない方がいいということだった。でも今回事務所をリフォームした時には、クロスの上から粘土が主成分の自然系の塗料を塗装したのだけど、あえてアイボリー色を選んでみた。普段であれば白の中に色を入れることはないのだけど、今回はもともとあった扉にブルーグレーのような色がついていたから、それをもとに考えると真っ白があわなくて、アイボリーにしてみました。甘いというかやさしい感じで今までにないイメージを楽しんでます。

廣谷さんの事務所(みっつデザイン研究所)のアイボリーの壁

: 既存のものがある場合はそれにあわせないとね。色って他のものとの比較だからね。

: この間ある建物(交流センター)を見学に行ったの。その建物はガラスのチューブのまわりに、白い箱が食い込んで並んでいる透明感の高い建物で。光や素材によって、場所ごとに白色を微妙に変えてあるという話しを設計者の方から直接聞いてさ。少しグレーが入っていたり、アイボリーだったりしていて。全体で見ると、同じ白に見えるけど、よく見ると確かに微妙に違うの。新鮮だった。

一同 : へぇー。

: 逆に微妙に変える方が違和感ありそうな気が。。。全部が同じ色に見えてしまうと、影で本当は濃く見えるはずのところが同じに見えてしまったりしそうだけど、そんなことはなかったのかな?

: なかったよ。公共の建物だし全面ガラス張りだからということもあるのかもしれないけど。

: その違いってわかるものなの?

: 分からなかった。説明を聞いて気づきました。

: 真っ白がいい場合もあるかもしれないけど、かなりきついというか強い印象になりますよね。

: 真っ黒もそうだけど、真っ白って自然の中にない色だから違和感があるんじゃないかな?

: 墨のような少しグレーがかった色の黒はあるけど、真っ黒はないね。

: 他のものとの取り合いによってかわってきて、例えば工業製品、無機質な素材、金属質なものにあわせる場合には真っ白もあうけど、自然素材にあわせるとちょっと違和感があるのかな。

: 壁が真っ白でも、床の養生をはがしたら床の色が反射してちょうどよくなったということもありました。

: 床の木の色が反射して壁の白が少し黄色っぽくなるってこと?

: そうそう。

: ムクの木とか自然素材をつかう場合に、あわせる壁や天井の白を黄色が入りすぎた白にするとやぼったくなりすぎる感じがしてしまう。使う木などの素材の色にあわせたり、さっき話に出た周りの色を反射することなども考えて、その家にいちばんあう白を家ごとに決めていくようにしています。だから標準という考え方はないかな。

: あとは色を決める時には、大きなサンプルで確認しないと決められないよね。

: 面積がかわると明るさの感じ方がかわってくるからね。

廣 : 冒険して色を使ってみることはありますか?

: 冒険というほどではないけど、部分的には色を使うことはあります。私も壁や天井を塗装して色を入れることはないけど、和紙とか襖紙とかタイルとかで色の入ったものを使うことはあります。

壁を一面だけ色のついた和紙(手漉きの和紙を赤土と柿渋で染めたもの)を貼った家。

「宝の家」(設計:いろは設計室)


天井の仕上げや高さについて

: 天井はどうしていますか?

: 私は白くすることが多いかな。

: 吉村順三が設計した福岡にある料亭(河庄)で、1階がカウンター席、2階に座敷がいくつかある建物を見学しました。2階は部屋ごとに天井の仕上げが違うんです。板、網代、簾、和紙など。床の畳と壁の仕上げはほぼ同じで、天井の違いが部屋の個性を作っていて、印象がこんなに変わるものかと実感できました。

: 天井に色を入れることもありますか?高さによっても印象が違うのかな。

: 私は仕上げにペンキを塗ることはほとんどなくて、木やベニヤを張ることが多いんだけど、永田(昌民)さんが壁や天井をペンキで真っ白に塗るのを見ると、天井の高さが気にならなくなる印象がある。

: 天井と壁の境い目がわからなくなるよね。

: 白くしない場合も、天井の高さは低く抑えるんですか。

: (以前勤めていた)奥村設計所ではそんなに低くなかった。2300から2400ミリはとっていた。低くするところはするけど、何が何でも天井が低いのがいい、ということはなかった。

: リビングが2400ミリの天井高さって低いの?高いの?

: 普通じゃないかな?

: ハウスメーカーとかではそれくらいが普通の高さなのかな。

: 私はリビングだったら2300ミリはとるかな。

: 永田さんだと天井高さはどのくらいなの?2200ミリとか?

: 全部平らな天井で21602200ミリの天井高さの家もあるよね。

: その代わり建具を天井までの高さにしてる。

: そうすると広く見えるってことか。

: 奥村(昭雄)さんは内法とか家全体の作り方のシステムというのかな、そういったことにとてもこだわった。

: それはなぜですか?

: リズムなのかな。

: そうだね、たぶんリズムだね。

: 思考のリズムということですか。

: 家を考える時にリズム感のようなものを重視する人と、全体像を考えていく人がいるということなのじゃないかな。

: 奥村さんはグリッドでものを考えたり、工業製品にあわせて何かを考えたりとかが得意でしたね。そうする中で一つの空間というよりシークエンス、空間の展開みたいなものを重視していたように思います。

 

 

色の使い方

: 事務所のリフォームで既存の扉の色にどんな色をあわせるかを考えるにあたって参考になったのが、建築の作品集。その中から自分の部屋にある色に似た色を使っているいい組み合わせを探して、そこに色見本をあわせて、実際に使う色を決める参考にしてみた。そのやり方であれば、プロじゃない一般の人でも冒険しやすいと思った。ただし、写真と実際の色は印象が異なるから注意も必要だけどね。でも、全部自分の頭の中で考えてセンス頼りということじゃなくて、街を歩きながらでもいいし、いい色の組み合わせを日常の中で探していくということも大事だと思った。

: 色って日差しと関係してるのかな? 北の方はあまり色を使ってないよね。

: でもスウェーデンとかはカラフルなイメージがある。

: 自然の色も結構あるけど、アフリカとかメキシコとかとは違うよね。

: 気候によるのかな。南国は鳥でも花でも色が鮮やかだもんね。あれってどうしてなんだろう。

: 日本の伝統色シリーズみたいなものでは、「若紫」とか、「薄桜」とか、ぼんやりした色が多いですよね。それは、日本は湿度が多いし、霧がでたりするので、色も少しぼやっとしたくすんだ色の方がきれいに見えるからで、南の方はカラッとした気候だからはっきりした色の方がきれいに見えるから好まれた、、、というような話を聞いたことがあるよ。


前に一緒に仕事をしたインテリアデザイナーの人が、リフォームで窓の手摺の色を塗り替える時に海老茶に近い赤を選んだことがある。普通に考えると手摺の色はグレーとか壁の色に合わせそうだけど、その人は赤を選んだ。その理由は、手摺の後ろに大きな木があって、春には新芽が出て窓の外は緑でいっぱいになる。赤と緑は補色関係にあるから、赤を入れると緑が引き立つからだと説明していた。色の使い方って色々あるな、、と思った。

庭の緑の色が引き立つ赤く色をつけた手摺

 

: 大きな面じゃなくても、例えば小さな部分に少しだけとかの使い方も含めて、設計する家の中に色を使うことはありますか。

: 建物の室内は生活の背景であった方が良いと考えているので、意図的に色を入れることは少ないです。

: 建築だけじゃなくて、例えばソファや椅子などの家具とかブラインドとかはどうですか。

: インテリアの領域では、住まい手の好きな色を差していくことが多いです。

: 自然素材の色はどうしてますか。例えば木でも色の薄い濃いがあるし、木目がはっきりしているかどうかとかもあるけど。

: 素材感もあるし、住まい手のイメージもあるし、金額のこともあるので、色々ですね。

: 木の色を濃い茶色にしたいという要望の場合、塗装で着色しない場合はウォールナットとかチークとか高価な木しかないから、それを実際に使うのは予算的になかなかむずかしい場合が多い。着色して濃い色にするという方法もあるけれど、できるだけ無垢の木そのままのよさをいかしたいと思っているので、色のついた塗料を塗るというのは、室内の場合はできるだけやりたくないんですよね。

: 最初は着色する予定だったけど、実際に木が張られたところを見るともったいなくて塗らなかったこともあります。

 

色の効果

: あるお菓子メーカーの店舗が、以前は黄緑とえんじ色を使ったぼんやりとした印象だったんだけど、どの店舗も全部リニューアルしてボルドー色になったら急にイメージが変わったの。よく見てみたら色以外は何も変えてないのに大きく変わったから色の力ってすごいなと思った。

: その感覚わかる!昭和30年代か40年代くらいに建てられた何の変哲もない普通の古い戸建て住宅があって、それがある時、外壁を全面的に塗り替えたの。壁はベージュでその他の屋根とか窓枠、縦樋など、その他の部分は全部、ほぼ黒に近い濃い紺色になった。色が変わると急にその家がかっこよく見えたりして、色って印象をガラリと変えるな~と思った。

: 建物を人で例えると、外壁に色を重ねるというのは、顔に化粧をのせているような感じですよね。色も化粧も流行があって時代によって変わっていくのだけれど、その時々に合った色を変えられるというのは、楽しいことですよね。今はDIYが進んで、様々な場所の色を誰でも気軽に変えられるようになってきていますし。でも、やっぱりスッピン美人が一番いいなと思います。自然の色や素材そのものの色は普遍的なんだと思います。